Action活動レポート

「農泊と観光 」~1章:はじめに~

「農泊」は「農山漁村において日本ならではの伝統的な生活様式を体験し、農山漁村の人々との交流を楽しむ滞在」と、「明日の日本を支える観光ビジョン」(平成28年3月策定)により農林水産省によって定義された。

 また、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成28年11月改定)では、「農泊によるインバウンド需要を取り込むとともに、ビジネスとして実施できる農泊地区を500地区創設」することとし、支援策を下記のように挙げている。

  1. 地域での合意形成や法人の立ち上げ、現場で活躍する人材の確保・育成などの農泊ビジネスの現場実施体制を構築する。
  2. 地域の食、農村森林景観、海洋レクリエーション、古民家などの素材を観光コンテンツとして磨き上げる。
  3. 農泊の魅力の国内外への情報発信や受入地域への農泊ビジネス化を働きかけるなど、政府としての目指す方向性を発信する。

これを受けて農林水産省は平成29年度予算で、農山漁村振興交付金に新たに「農泊推進対策」を設け、農泊によって付加的な所得を獲得する意欲のある地域に対し、農泊をビジネスとする体制構築や着地型商品の開発などを重点的に支援することとした。

 これらを追随するような形で観光立国基本計画(平成29年3月閣議決定)や「未来投資戦略2017」(平成29年6月閣議決定)においても「農産漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる体制を持った地域を2020年までに500地域創出」することが示されており、全国各地のDMO(Destination Management/Marketing Organization)創出事業と連動して、農泊を中心とした第一次産業の現場でのグリーンツーリズムは官民挙げての取組として定着しつつある。また、これらは人口減少による地域の経済活動の減少分を交流人口の消費活動でカバーしてゆこうという観光庁の考えかたを基本にした、農林水産業従事者の所得向上を図るものである。1

農林水産省の「農泊」への取組は平成25年の「食と地域の交流促進対策交付金」に始まり、その後「都市農村共生・対流総合対策交付金」、「農山漁村振興交付金」として施策名を変えながら現在の形に変遷してきた。新たな収入源や仕事を作るため、旧小学校区の範囲に集中的な資金投下をすることで人口減少問題に直面する農山漁村の振興策としてきた経緯がある。筆者はこれら施策の中国四国農政局の審査・評価委員として平成25年6月から平成30年1月まで務めてきた経験を踏まえ、グリーンツーリズムの展開事例を検証し、日本のツーリズム産業の発展のためには農山漁村の資源の活用、着地型商品としてのコンテンツ化が不可欠であることを示したい。